解決金約200万円
問題の起こり
AさんはサラリーマンとしてZ社で10年勤務。勤務態度は良好でしたが、とあることがきっかけでZ社社長と仲のいい同僚のBさんに目をつけられました。
AさんはBさんから会社内に悪い噂を流され、Z社で仕事をやり辛い環境に置かれてしまいました。妻子のあるAさんはそれでも会社を辞めるわけにいかず、Z社で仕事を続けました。
しかし、Bさんは嫌がらせに屈しないAさんに我慢できなくなり、Aさんが勤務態度不良であるとの嘘の話をZ社社長に話しました。社長はBさんの話を信じてしまい、Aさんを懲戒解雇処分にしました。
依頼から解決まで
Aさんからの依頼を受けた当事務所は、Z社に内容証明郵便で通知書を送り、解雇の撤回と解決金の支払を求めました。
しかし、Z社側には代理人の弁護士が就きましたが、「Aさんに勤務態度不良であるのは明らか」との一点張りで、当方の求めには一切応じませんでした。
Z社側が示した勤務態度不良の事実はAさんの見に覚えのないものばかりで、Aさんは本件懲戒解雇に納得することはできませんでした。
そこで当事務所は、Aさんの代理人として裁判所に労働審判手続の申立をしました。労働審判では、会社側から客観的な証拠は一切示されず(証拠はZ社側の関係者の言い分が記載された「陳述書」のみ)、結果第1回目の期日で解雇は撤回され、Z社が200万円を支払うことで事件は解決しました。
解決のポイント
本事件でZ社がAさんに下したのは「懲戒解雇処分」でした。懲戒解雇は、懲戒処分の中でも一番重い懲戒処分で、労働者に対する“死刑宣告”と言われています。
通常の解雇と異なり、一般的には退職金が出ず、即日解雇も許されるとされています(就業規則などに別の定めがある場合を除きます)。
懲戒解雇の経歴があるということは、その後の再就職も困難になることもあり、懲戒解雇は労働者にとって非常に厳しいものといえます。
労働者に多大な不利益を与える懲戒解雇は裁判所でも厳格に判断され、重大な理由がない限りは無効となることが多いです。
本件のように「勤務態度不良」を理由とする解雇は、通常の解雇でも会社側に損失を被るほどの悪質な場合や、相当回数の不良行為が認められるケースに限られるとされています。ましてや本件では、Z社は懲戒解雇を行っており、それ以上の立証が求められます。
結果Z社側は、懲戒解雇の理由を立証できず、結果的に解雇は無効となりました。解雇は無効となりましたが、会社に戻りたくないAさんは復職は求めず、解決金を求めました。そしてZ社がAさんに、解雇されてからの賃金に数カ月分の賃金を加えた、計200万円を払うことで解決となりました。